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前稿「エロティシズムの系譜(下)」 のための金魚のFun & Fun。文字量が規定を超えてしまったため、更新して記事にします。前稿前半に書いた、MoMAでのマリーナ・アブラモビッチ展の情報のつづきです。
更なる蛇足「金魚のふんふんフンフン更に Fun」まで書いてしまいました。 金魚のFun & Fun: 友人のアメリカ人女性に「私もグニャグニャ・パフォーマンスを体験してみたいわァ」と言われて、前記MoMAのマリア・アブラモヴィク展 Marina Abramovic を再訪(会員の僕と行くと入場料が安いゆえ)。あいかわらず超満員の館内に立たれていたのは、男女ではなくふたりの全裸女性でした。僕はまたよろこび勇んで通りぬけましたが、同行の女性はかなり不満そう。「(全裸男性がいなくて)残念だったね」と僕、「うん、残念だった」とかの女。観客参加のパフォーマンスは、ひとの気持ちを正直にさせます。 僕はといえば、今度はお尻の位置の巨大な男性器がなかったので、実にスムーズ。肉のサンドイッチの中身になるだけで、パンに触れていなくても、こんなにも温かいとは思ってもみませんでした。これは同行のかの女も同感。まさに通りすがりの暖かい「連続性」。 ただ今回のパフォーマンスのふたりの全裸女性の位置が、それぞれ後方に下がっていて、あいだの空間がずいぶん開いている感じがしました。前回は細身の僕でも、自然に両方の全裸体に触れてしまいましたが、今回は伝わってくる体温を感じるのみでした。まぁこれもミュージアムの観客動員数を考えれば、当然の処置かもしれませんね。パフォーマ—のお肌がすり切れちゃうもんね。 それにしても、マリーナのパフォーマンス、ヴィデオ、インスタレーション、写真、サウンドピース、など約50点はどれもすごいド迫力。マリーナの生きたユーゴ内戦、その分裂にいたる民族戦争の時代、そして何百年にわたる「ヨーロッパの火薬庫」としてのバルカン半島のカルマが色濃く滲みでていて、ここでも「戦争とエロティシズム」「性と死」の関係を深く考えさせられます。マリーナと同民族のセルビア人たちはいまから600年前のコソボの戦いで、オスマン・トルコの猛攻に破れ、王ともどもに戦死した先祖たちの記憶を、いまだに決して忘れていないといいます。列島のなかで、同民族で争っていただけのわれわれ(淡白な)日本人には理解しがたい執着ですが、他民族に殺戮、征服されることにはそういった異常な執念がつきまとうことも、アジアの近代史を見渡せばうなずけます。 わが生まれ故郷でもある大阪人が結集して、あの夏の陣で滅ぼされ首都を江戸にもって行かれた恨みから「徳川家康をののしる会」というものがいまだに存在していると聞きます。あの司馬遼太郎氏も会友に推挙されてしまったとか。聞いたときにだれもがジョークだとわかり、大阪人の笑いへの執念深さをはたまた笑い飛ばすだけですよね。バルカン半島にも600年前からの史実について、このようなジョークが飛び交う余裕ができる日を願います。 パフォーマンスのひとつに、全裸女性が股間の小さなサドルだけで支えられ、観客の頭上高くに貼りつけられ、煌煌と光を浴び、じっと留まっているものが圧巻です。最初に見たときは、立体感のある写真作品にしか見えませんでした。あの姿勢を崩さず、いったいどれほどの時間を保てるのでしょうか。交代時間まで観ていませんでしたが、それぞれのパフォーマーがまさに体力の限界まで挑戦している感じがします。 そしてかれらパフォーマーたちを、かの女の「気合い」で存続させていると思われる当の作家マリアは、二階大ホールの中央で「にらめっこパフォーマンス」。 まばたき以外微動だにしない、ということだけなら、街角の大道芸人「自由の女神もどき」と大差はありませんが、かの女の存在そのものから強いオーラが発しているのを感じます。会場の隅っこに座り込んだ十数名の列があり、かれらが実はにらめっこの相手となる一般観客なのです。僕も参加したいと思いましたが、そのうちのひとりに訊くと「朝からもう5時間も待っている」ということでした。にらめっこしただけで必ずエネジーをもらえるわけではないと思いますが、ながくマリアを観つめていると、このミュージアムに降臨した女神のような気がします。僕たちはマリーナに最敬礼して去りましたが、その様子も会場に多数あるヴィデオカメラから、ネットでライヴ放映されています。 金魚のふんふんフンフン更に Fun: マリーナMarina Abramovicの展覧会記事に対して、NY地区からの新規アクセスが増えています。ご来店ありがとうございます。これからもときどきお訪ねください。 マリーナの展覧会は、おりからの美術館ブームに輪をかけて、NBCなどで報道されたせいで超満員、大混雑のようです。現在のMoMAのインテリアは日本人建築家による拡張大改装の結果ですが、まったくの大不評で(少なくとも僕のまわりではこの改装をよく言うひとはいません)それでも入れ物が大きくなった分、観客は大増加し、また数年後の超高層MoMA Tower計画(写真右)というものが進行しています。しかしWTC跡のフリーダムタワーといい、空に向けた大剣のような攻撃的なビルの形状はなんとも、なんともねぇ。なんとかならないものでしょうか。 いずれにせよ、美術館を訪れるひとが増えていることはいいことです。マスメディアやネットに犯された頭脳を癒す効果絶大。皆さんお誘い合わせのうえ「ネットを捨てよ、ミュージアムに行こう」。 NY在住のひとは、よくご存知だと思いますが、ほとんどのミュージアムがとても格安で入館できる時間帯があります。 日本からの方のためのインフォ: ・メトロポリタン美術館:入場料20ドルと出ていますが、年中いつでもPay What You Wish 払いたいだけ、ということで、25セントでも1ドルでもOK。ときどき窓口でzip code 郵便番号を訊かれることがありますが、アメリカ在住でなければホテルの番号10011など適当に言っておけばよいのです。旅行者にもこのディスカウントは有効です。 ・ MoMA:毎週金曜日 4:00pm - 8:00pm Free 無料ですが、4:00pm前後はかなり混雑しています。 ・グッゲンハイム美術館:毎週土曜日 5:15pm - 7:45 pm Pay What You Wish 払いたいだけ。25セントでも1ドルでもOK。 ・ホイットニー美術館:毎週金曜日 6:00pm – 9:00 pm Pay What You Wish 払いたいだけ。25セントでも1ドルでもOK。5月末まで 2010 While Biennial 開催中。必見。 ほかにもほとんどのミュージアム、植物園、動物園などで時間帯によってDeep Discountがあります。夏場になると夜も開館しているミュージアムも増えます。 「ネットを捨てよ、ほとんどタダでミュージアムに行こう」 イカの哲学 につづく
by nyckingyo
| 2010-04-11 07:39
| ソラリスの海に泳ぐイカ
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