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「失われた大地との絆を結び、人々を青き清浄の地へと導かん」 —風の谷のナウシカより 「ナウシカ」のなかの古代から伝わる上記の預言を、「なでしこJapan」に比喩したツイッターは、ワールドカップ女子決勝戦前の13日ごろからネットの虚空にたくさん飛び交っていました。だれが最初にこのメタファーに気づいたのかはわかりません。ただ「なでしこ」の優勝が決まり、表彰のセレモニーで大量の黄金色のテープが舞い降りてきて、そこに一面の金色の野ができたとき、この奇蹟の伝説は『ナウシカ』と『なでしこ』の両方に、比喩をこえた現実となりました。風の谷の民を救った『ナウシカ』と、震災・原発の問題でうちひしがれる国民全員のこころに大きな希望を与えた『なでしこ』。いやはやこのメタファーには、決勝戦の対戦相手、アメリカ・チームさながらにまいってしまいました。上の写真との絶妙の組み合わせは@shin19751119氏の7月18日のツイッター(twitpic)からです。 この預言のことば以外にもイマジネーションが膨らんだので、「なでしこ」と「ナウシカ」を言葉と画像の両方でコラージュしてみます。 映画『風の谷のナウシカ』冒頭ナレーション 腐海一の剣士・ユパ:「また村がひとつ死んだ」「行こう、ここもじき腐海に沈む」。 巨大産業文明が崩壊してから1000年。錆とセラミック片におおわれた荒れた大地に、くさった海…腐海(ふかい)と呼ばれる有毒の瘴気を発する菌類の森がひろがり 衰退した人間の生存をおびやかしていた。 いまわれわれのおかれている状況ととても似ていると感じます。物語はナウシカの生まれる1000年まえに何があったのかを説明していませんが、「腐った海」を造り出したのは人類の過剰なる欲望と、そこから派生した人類同士のばかばかしい戦いからにちがいありません。 ナウシカ:「腐海の植物の胞子を集め、地下500mからのきれいな水で育てたら、毒は消えてしまった。『土』が汚れているのよ。だれが世界をこんな風にしてしまったのでしょう。」ナウシカは涙する。 このことばもつい最近われわれが聴きなれたものと酷似しています。「形而上的なことなど考えている暇などないんだよ、復興復興!」といわれても、すぐ裏の方でどこかわりきれない不思議な物語が進行している気がしてならないのです。 トルメキアの皇女クシャナ:「犯されながら腐海とともに、生きるというのか?」 風の谷の長老:「あんたがたは『火』を使う」「多すぎる火は何も生みやせん。火は森を一日で灰にする。水と風は百年かけて森を育てる。われわれは水と風の方がええ」。 冒頭の預言の言葉「その者、青き衣をまといて金色の野に…」は、預言者・おばばが壮年の剣士ユパに奮起をうながすため、古来の言い伝えを語るという設定で登場します。 ユパ:「ばば様、からかわれては困る。わたしはただ腐海の謎を説きたいと願っているだけだよ。われわれ人間はこのまま、腐海にのまれて滅びるよう定められた種族なのか、それを見極めたいのだ。 腐海との戦いは、いつのまにか攻撃的な皇女の「トルメキア軍」とナウシカの「風の谷」そして「アスベル」の国という人間同士の三つ巴の戦いに転化していきます。ナウシカは放射能によって超巨大化した昆虫の王蟲(オウム)や、動物たちの声を聴きとれるやさしい王女でした。しかし、トルメキアの皇女クシャナが王蟲の子供の一匹を傷つけ囮にしたことによって、無数といってもいいほどの怒った巨大王蟲の大軍が風の谷に向かって攻めてきます。皇女クシャナは、かって世界を焼き払ったという巨神兵の末裔で対抗し、王蟲の軍団を焼き払おうとしますが、一族の将来である一匹の子供を思う無数の玉蟲軍団にはかないません。 あわや人間全員が玉蟲の大集団に踏みつぶされようとしたとき、ナウシカは宙空から、サッカーのボールのようなその玉蟲の子供をそっと地面に降ろします。狂乱の玉蟲群は即座に止まれず、今度はナウシカがサッカーボールのように玉蟲軍団にはじき飛ばされます。 やっとその玉蟲軍団が止まったとき、その中央に、ナウシカが倒れていて、さきほどの玉蟲の子供が一生懸命かの女を治療している姿が、みんなの目に入ります。 アメリカのゴールキーパー、ホープ・ソロ Hope Solo はたえずなでしこジャパンの脅威の存在でした。 決勝戦途中のけがで充分な実力を発揮できなかったホープは、悔し泣きをしながら、なおも「どのチームより素晴らしい試合をした日本を称えたい。どのチームより優勝にふさわしかった。誰よりも日本を祝福したい」と語りました。 残り時間3分、左コーナーキックから澤穂希が起死回生のシュートで追いつきました。 澤:「注目されたことを持続させるためには結果を残さないといけない」。 ボールは吸い込まれるようにゴールに入り、すべてが振り出しに戻りました。やがて精神力に優るなでしこジャパンはPK戦で奇蹟の勝利。 おばば:「奇蹟じゃ。何という『いたわり』という愛じゃ。巨大な玉蟲たちがこころを開いておる」。 子どもたち:(目の見えないおばばに)「姫ねえさまが、まっ青な異国の服を着ているの。まるで金色の草原を歩いているみたい」。 アメリカのTV解説者:「震災に苦しむ国にいい知らせを持ち帰るため頑張った日本チームのファイティングスピリットに、アメリカは勝てなかった」 「日本チームには技術とチームワークにすぐれ、なにより気品に満ちていた。すべてのチームのなか、最も尊敬されていた。おめでとう、ジャパン!」 澤穂希選手がアメリカのメディアに語ったこと。日本のメディアに見当たらないので、英文から再簡訳しました。 澤穂希:「私たちはここで、サッカーの試合をすることだけじゃなく、もうちょっとだけでもなにかしたい、と思っていました。私たちが勝つことで、なにかを失った人、だれかを失った人、けがをした人、 傷ついている人、そんな日本の人びとの気持ちとふれあい、かれらが一瞬でも楽になったら、本当に特別なことを成し遂げたことになる。」 「こんなつらい時期だからこそ、みんなに少しでも元気や喜びを与えられたら、それが私たちの成功です。日本は傷つき、たくさんの人びとの生活が困窮しつづけています。それ自体をすぐに変えられなくても、日本は現に復興しつつある。そんな日本の代表として、復興をつづけていく気持ちをプレイで見せたかった。いま、まさに夢のようですが、私たちの国が、私たちとシェアして喜んでいただけるとしたら、とても幸せです。」 決勝戦でも後半勝ち越しの2点目を入れたアメリカ・チームのスーパースター、アビー・ワンバック Abby Wambach も、自分のブログにこう書いています。 「母国アメリカからの何百万人の応援のエナジーは、まさに『12番目の選手』だ」と。「しかしながら日本チームにはもっと大きな、とても大きな『12番目の選手』がいた。それは『切なる願いと希望』と呼ばれる」と書き足しています。 われわれ日本人の観客全員が「切なる願い」と「希望」を込めて、なでしこを観つめ、祈りつづけました。それはすなわち、われわれみんなが12人目の選手だったと言ってもいいのではないでしょうか。なぜなら、少なくともわれわれの精神のなかに宿っていた「腐海」は、なでしこジャパンの勝利とともに、浄化されたと信じられるからです。そしてその精神の浄化が、現実に起こっている「腐海」現象すらも徐々にではあるが治していくことを教えてくれたのは、かわいい王女「ナウシカ」であり、日本の「なでしこ」乙女たちであったと思うのです。 金魚のFun & Fun 東部時間日曜午後の決勝戦、なでしこJapan VS. USAはフラット・アイアン地区にある大きなスポーツ・バーで観戦しました。日系人のサポーターで超満員の店内は「Nippon, Cha Cha Cha!」の大声援で、とても応援しやすかったのですが、客の10%に満たないアメリカ人が「USA!」の連呼しても消え入ってしまいそうで、なんだか可哀想なほどでした。もちろんタイムズ・スクエアの巨大モニターのまえなどに行けば、USA Go Go!とさぞうるさかったことでしょう。試合結果が出たあと、すぐに立ち直ったアメリカ人サポーターたちは「日本おめでとう!」を連発してくれました。実力ではあるいは優っていたのに、なでしこジャパンの精神力に負けたことに対する悔しさが、どこか宙空に霧散してしまった印象を受けました。 オリンピックなどでも、競技中はもちろん必死に自国アメリカの選手を応援しますが、負けてしまったら、その勝った他国の選手のプレイを絶賛する。そういったフェアネス精神は抜群のお国がらです。それでも今回、試合中も、試合が終わっても、日本のなでしこ乙女たちを絶賛する声が長く長く響きつづけたことが信じられないほどでした。それは地震災害と放射能汚染の危機に瀕した国民への同情のような感情だとはどうしても思えないのです。上述の澤選手のインタヴューにも出てきましたが、国家的危機のときに、みんなを元気づけるための真摯な、まことに真摯な努力と、強靭な団結をつづけ通す精神力が勝利を導きました。そのことは国境やことばの壁を越えてそのままだれにでも伝わるのだと思います。 似たような感覚が、映画「ナウシカ」がアメリカで封切されたときにもありました。当時小学生だった娘と、かの女の同級生のアメリカ人の女の子を数人つれて観に行きました。女の子たちは映画のなかで全員深くナウシカの虜になり、映画館からでるとみんなの目の色がすっかり変わっていました。ある子の目はパープルに、ある子は翡翠色に輝いているのです。猛烈にまっすぐなアメリカの子供たちといっしょで、そのときの僕のこころのなかは、すっきり、はっきり、さわやかでした。 ほら観てください、ナウシカやなでしこ、かの女たちのおかげで僕たちのこころはいまこんなに澄み切っている。みんなのこころが澄めば、この世の中をひとつづつ浄化していく作業があるのみです。腐海を浄化する作業があるのみです。重ねてかの女たちの「精神」のちからに、感動と深い感謝を呈するものです。
by nyckingyo
| 2011-07-20 12:10
| 洪水からの目醒め
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