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![]() 闇箱のなか、集合無意識は開花するよりつづく ![]() そのゾーンの中心には、そこにたどり着いた人間の望みをなんでもかなえる「部屋」があるという言い伝えがあった。ゆえに禁を犯してそのゾーンの中心に侵入しようとする者たちはあとを絶たなかった。 ![]() ![]() この映画「ストーカー」のあとのチェルノブイリ事故、そしてその四半世紀あとに起きた福島第一原発事故という時制の流れが、なぜか頭の中であいまいになり、三つのストーリーが渾然一体となって「ゾーン」という言葉だけが重くのしかかる。三つはお互いにそっくりであるゆえに、それらのイメージがアタマの中で撹拌されるのだ。これは現代の日本人ならば誰でもがかかるであろう分裂のきざしである。ゾーンとなりはてたふるさとから引きちぎられた人びとの哀しみは想いに余る。また同じエリア=ゾーンに残った者にも、より大きな不安が襲う、という矛盾がある。それは自然の所作ではなく「特定できる人間」たちの仕業なのだが、今後その加害者たち(モモが時間の国で逢ったマイスター・ホラが語るように、かれら=灰色の男たちはもともと人間などではない、と確信しているのだが)が罰せられることはないだろう。それどころか、その加害者たちとその仲間は、自分たちの起こした一大地球汚染を、さらに拡げる動きに終始しているように思えてならない。いまだに線など引けない福島の広大な「ゾーン」と、そこに住んでいた人びとの心の中に広がるネガティヴ・ゾーンに限りない相似形を想像する。 ![]() ドキュメンタリー映画「チェルノブイリ・ハート」では、四半世紀後の現在、隣国ベラルーシで生まれて来る子どもの85%以上が未知の心臓疾患や放射線障害を持つ、とマリアン・デレオ監督は訴えている。正視に耐えないほどの院内の子どもたちの惨状はいったいいつまで続くのだろう。マンハッタンで日本語字幕版が紹介されたとき、われわれ日本人/日系人のあまりの狼狽ぶりに、監督マリアンが「福島の状況はベラルーシとはちがう、日本人はもっときちんとできる。」と慰めるような言葉を吐かれたことが、かえって大惨事の印象を深めることとなった。その後の日本国の対応を見れば、かの女の予測は見事に裏切られている。 ![]() 5月はじめに訪NYCされた小出裕章氏は、日本国と電力会社が、事故の責任をまったく取らないばかりか、放射能汚染を拡大する方向に舵を切っている現状を強く弾劾され、世界に向けて発信された。小出氏も「今回の福島原発事故はまさに戦争である」と言いつづけられている。 ![]() ストーカーの妻はいう、「どうして私の時計を取り上げたの? どこに行くのって訊いているのよ! あんたの言葉を信じてきたわ。子どもたちのことを考えたことがあるの? あんたは私を年寄り女にしただけ! 私を破壊しただけだわ!」 *以下、映画の台詞書き出しは、英語字幕版からの翻訳なので、日本語字幕版と相違があるかもしれません。金魚 ![]() ![]() ![]() 命を賭してまで、どうしてその部屋に行こうとするのか? それは密猟者たちが「部屋」にたどり着いた者の望みをなんでもかなえる「秘宝」の存在を信じているからではないだろうか。 ![]() ストーカーの忠告を聞かずにゾーンに向かって前進しようとした「作家」は、「止まれ、動くな!」という姿も見えない声に怯え、たちこめてきた霧に行手を阻まれる。ゾーンの周囲は、自然が刻一刻と「変化しつづける」。風が吹き、大地が揺らぎ、そして同じコースをたどっては「現世」に戻ることもできない。 ![]() 密猟者は魔女のささやきを聴く。「そして大きな地震があった。太陽は、髪の毛で編まれた喪服のように真っ黒になり、月は血のように赤く燃えた。空の星々はすべて大地に堕ちてきた。まるでいちじくの樹が強風に揺らされたとき、まだ熟れていないいちじくの実を落とすように。」 「そして空は巻物が巻き込まれたときのようにばらばらに割れ、すべての山々と島々はその場所を離れていった。地球の王、偉大なる者、富める者、屈強なる者、そしてすべての自由なる者も、山の岩のあいだの洞穴に自らを隠した。そしてかれらはその山と岩に向かって叫ぶ。『われわれのところに堕ちてこい!王座に座る者の存在と子羊の憤怒からわれわれを隠してくれ。』だが、だれがそこに立ってなどいられるものか? アハハハハ、ハハハハハ!」(英語字幕版から、金魚訳) ![]() ![]() 先頭を歩いていた作家は、更なる百年の命を与えられる啓示を受けた気になるが、「どうして『永遠の命』じゃないんだ」と欲望を増幅させながらつぶやく。 ついに「部屋」の入口にまでたどりついたことを喜ぶ密猟者。 ![]() 密猟者は、この部屋こそ人類の希望であり、もし爆破されればすべての人類は地球を離れなければならない、と訴える。 「希望がすべてなくなれば、ここだけがかれらが戻って来れる場所なんだ!」「あんたらだってここに来たんじゃないか!どうして『希望』を破壊するんだ!」 ![]() 三人はおたがいに他のふたりと対立する。作家はさらに密猟者に対して言い返す。 「おまえはおれたちの『苦悩』を使って、カネを稼いでる。いやカネだけじゃなく、おまえはここで楽しんでる。おまえは『神の苦悩』が好きなのさ!おまえは、誰が死んで誰が生き延びるかを決めようとする偽善者のシラミだ!」「密猟者よ、どうしてお前自身でこの部屋に入ろうとしないのか、いまやっとわかったよ。」 ![]() 「それは誤解だ! 密猟者は『部屋』に入っちゃいけない。密猟者は秘められた動機から、ゾーンに入ることすら許されないのだ。そうだ、あんたは正しい、俺はシラミだ。俺はこの世界で何にもいいことはできない。俺の妻にさえ何も与えてやることもできなかった。どんな友だちもつくれない。でも、どうか俺のものをこれ以上取って行かないでくれ!」「かれらは有刺鉄線のうしろから、俺のものをみんな持って行ってしまった。」「だから、ここは全部俺のものだ。わかるか! このゾーンにあるものすべては俺のもんだ!」「俺の幸福、俺の自由、自分への敬意、ここにはそれが全部ある!」「俺はここに自分のような破れかぶれの、 捨てばちの、他人をひどく苦しめる人間を連れてきた。なんの希望もない、何ももたない連中さ。だれもかれらを助けられない、シラミの俺以外はな!」「連中を助けることができて、俺はとても幸せさ。だから俺は泣きたいんだ。それでおしまいだ、それ以上何も望んじゃいない。」 ![]() ![]() そして最悪の状況は、事故から7年後にはじまる。われわれの子どもたちから病に犯される。不安は絶望に向かってまっしぐらに奔りはじめる。 ![]() ひとりひとりにとって、命とはたったひとつのかけがえのないもの。家族や友だちには、自分の命よりもっと大切な場合もある。この国家によって許可された集団殺人は、いまだに留まることを知らない。このブログでも、言葉の足し算に足し算を重ね、長すぎると言われても省略などせずに、ただひたすら戦争反対を叫んできた。70年前の史上最大の世界大戦では、世界中で六千万人という途方もない数の人間が殺された。日本では当時の国家の無責任で始まった戦争で、ふたつの原爆投下、大空襲から、かろうじて生き延びた者も、住んでいた土地が突然「ゾーン」となり、空からの業火でできた屍の山を見る。苦悩と絶望のくり返しのなか、国家はやっと降伏した。まわりにひどい被害は残ったが、その後の苦悩はときとともに徐々に癒えていく。 ![]() ![]() 先日のかれのNY講演でも「戦争はつづいている」と断言されていた。「瓦礫を拡散したり、広域の除染に関しても、政府と東電は放射能汚染を拡大する方向にしか舵を切らない。」人類の過去の歴史に、いったいこれほどに醜いいくさがあったのだろうか。 ![]() 三人は揃ってバーに戻って来た。そこでは妻が「足の動かない娘」とともに、ストーカーを待っていた。娘を肩車し、稼動している発電所の前を歩く密猟者とその家族。タルコフスキーのこの映画はストーカーの挫折とともに終わる。わが家に戻ったかれは「作家や学者どもは何もわかろうとしない。きゃつらのどこがインテリだ! 」と叫ぶ。現代の福島と放射能に関しての、似非文化人たちの無責任な言動に怒るわれわれの意識を代弁しているようだ。くりかえし、この映画がチェルノブイリ事故の6年も以前に撮られたことに脅威する。 ![]() 足の動かない娘は、テーブルの上のガラス器を念動力(テレキネシス)でいともたやすく揺らし、動かし、下に落とす。窓の外を列車が通り、部屋がまた「地震」のように揺れる。ひとはものを動かし、波動はまたひとを動かす。 ![]() ![]() ![]() だが、われわれがもし長い苦悩をつづけたあとに、絶望をも克服し「脱原発」「核廃絶」という意識を強くもって、地球星全体の意識を「浄化」することができれば、未来の人類=私たちの子供たちの子供たちの子供たちは、より大きな「秘宝」を手に入れた、ということができる。タルコフスキーがわれわれに託したメッセージは、それしかないのでは、と直感しつつ、そろそろこの重いエッセイを綴じることにしたい。 ![]() ![]() タルコフスキー「ストーカー」の表現が、ソ連邦の政治腐敗を弾劾するという意味からも、チェルノブイリの預言となったことは興味深い。ソ連の体制崩壊はチェルノブイリ事故のさらに5年後だが、それまでの冷戦世界の体制を大きく転換したという意味で、革命である。日本がどう変わるか、まだまだ紆余曲折の連続とは思うが、根っこから変わるチャンスを手に入れた、と確信する。この意味でも、人びとの意識のなかに「秘宝」が育ちはじめている。 ![]() 「脱原発の意識」を、すでにゾーンができてしまった日本から発信する。われわれの苦悩は、それがひとつのステップを踏むごとに「意識の秘宝」となり、それはやがて人類全体の意識の秘宝として、われわれを勝利を導くことも、むろん直感として深く信じている。 ![]() できるのは、破壊することだけだ。 そしてきちがいじみた恥知らずの物質主義が、 この破壊の総仕上げをする。 個人の心のなかに神が存在し、 永遠なるもの、善きものを 受容する能力があるにもかかわらず、 相対としての人間は、破壊することしかできない。 人々を結びつけたものが、 理想ではなく、物質的理念だったからだ。 人間は自分の肉体をすばやく守ってきた。 だが、魂をいかに守るかについては考えなかった。 教会(宗教ではない)もその役を果たせなかった。 文明化の歴史の途上で、人間の精神的な部分は、 動物的な、物質的なものから、ますます遠ざかっていった。 そしていまや、われわれは、 無限の空間の暗闇のなかに遠ざかっていく汽車の灯を かろうじて見ることができるだけだ。 われわれの存在の第二の部分が、 呼び戻しようもなく、永遠に遠ざかっていくのだ。 - アンドレイ・タルコフスキー (「タルコフスキー日記」キネマ旬報社) この映画「ストーカー」英語字幕版は現在、YouTubeで2編に分かれて観ることができます。 Сталкер 1 серия / Stalker film 1 Сталкер 2 серия / Stalker film 2 下線部をクリック。(計2時間40分) ソラリスの海に泳ぐイカ(14)生け贄The Sacrificeに至る道/至らぬ道につづく ![]() ![]() ![]() この一文から、チェルノブイリ-フクシマ以降のわれわれがイメージするものは、やはり部屋の秘宝とは、「原発」という文明の異端児から、われわれ人類の意識を(脱原発という意識に)軌道修正させたことではないか。それがすなわち「宇宙からの来訪者がもたらした贈り物」だったというように比喩を重ねてみたい。 ![]() —あきらかにこの犬は(超能力者になったストーカーの)子どもやストーカーの家庭と深い因縁を持ってしまったことがわかる。黒犬→悪魔という図式ならば、この子どもと家庭は将来恐るべき破局あるいは転機に見舞われそうである。むしろそれは現人類にとってというべきなのかもしれない。もし子どもが新時代、現人類にとって変わるべき「スターチャイルド」ならば、この犬は「ゾーン」から派遣された忠実な「お目付役」のはずだからである。(「新人類映画としての『ストーカー』」手塚治虫)
by nyckingyo
| 2012-06-05 08:24
| ソラリスの海に泳ぐイカ
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